この記事では、「貯金していれば安心」という考えに潜むインフレリスクを、身近な事例とともにわかりやすく解説します。現金100%の家計が将来どんな問題に直面しやすいのかを丁寧にひも解き、投資への第一歩となる視点をご提供します。
預金だけでは本当に安心?──インフレがもたらす“目に見えないリスク”
「貯金をしていれば大丈夫」
多くの人が抱くこの感覚は、かつての日本においてはある程度正しかったのかもしれません。ところが、現在の日本においては、預金という手段だけではお金の価値を守ることができない時代に突入しています。その理由こそが、インフレ(=物価上昇)です。
たとえば、2000年代には牛丼一杯が300円以下で食べられた時代がありました。それが現在では、大手チェーンでも並盛り一杯500円〜600円が当たり前。つまり、同じ「1,000円札」でも、買えるものの量が減ってしまっているのです。これは見方を変えれば、「お金の価値が下がっている」と言えます。
銀行に預けても価値が減る?インフレの基本をおさらい
インフレとは、モノやサービスの価格が上がる一方で、同じ金額で買える量が減る現象を指します。総務省の「消費者物価指数(CPI)」によれば、2022年〜2024年にかけて、日本の物価は年平均2〜3%のペースで上昇しました。
このインフレの厄介なところは、「銀行に預けているだけ」でもお金の実質的な価値が減ってしまうという点です。たとえば、銀行に100万円を預けていても、物価が3%上がれば、翌年にはそのお金の“実質的な購買力”は97万円分に減っているというイメージです。
「お金は減っていないから大丈夫」と思っていても、使える価値が目減りしていく——これが、インフレが家計に与える最大のダメージです。
「元本保証」は安心?──リスクのない資産がもつ“もうひとつのリスク”
多くの人が「預金は減らないから安心」と感じる理由は、元本保証という言葉にあります。確かに、銀行に預けたお金は一定額までは預金保険制度により保護され、暴落することもありません。ですが、その「減らない」という事実だけを拠り所にしてしまうと、もう一つの重要なリスクを見落としてしまいます。それが、「実質的な価値が減っていく」というインフレリスクです。
減っていないようで減っている──元本保証の見えない落とし穴
仮に100万円を10年間預けた場合、利息が年0.001%なら、10年後に増える金額はわずか10円にも満たない程度です。ところが、その間に物価が毎年2%ずつ上がっていったとすると、10年後には当初の100万円では約82万円相当のモノしか買えなくなる計算になります。これは実質的に18万円分の価値を失っているのと同じことです。
こういった価値の目減りは、「数字が変わらない」ために見逃されがちですが、長期的には家計に大きな打撃となります。預金通帳に記載された100万円は確かに減っていない。でも、そのお金で買えるモノの量が確実に減っている——これが、元本保証のもうひとつの側面です。
安心を求めて選んだはずの「減らない資産」が、じつは確実に“価値を失う資産”になっている。インフレが続く現代においては、こうした見方の転換が必要不可欠なんです。
親世代の常識はもう通用しない──失われた30年と新しい経済環境
- 「貯金していれば大丈夫」
- 「土地の価値は上がる」
- 「銀行に預ければ利息がつく」
これらは、私たちの親世代が当たり前のように信じてきたお金に関する“常識”でした。しかし、今の時代にそのまま当てはめてしまうと、かえって家計を不利な方向へ導いてしまう可能性があります。
同じ“貯金”でも、時代が違えば結果も違う
たとえば、1990年代初頭までの日本では、定期預金の金利が年5%を超えることも珍しくありませんでした。100万円を預けていれば、1年で5万円以上の利息がついた時代です。その頃は、「貯金=資産形成」という構図が成り立っていたのです。
一方で、バブル崩壊以降の日本はどうだったでしょうか。内閣府のデータによれば、1990年代以降、日本経済は低成長が長く続き、「失われた30年」とも呼ばれる時代に突入しました。給与水準も1997年をピークに横ばい、もしくは下落傾向にあり、預金金利もほぼゼロのまま推移しています。
このような経済環境下では、親世代が当然としていたお金の運用方法が、今の時代には機能しません。貯金をしていてもほとんど増えない。にもかかわらず、物価は上がっていく。——これが今、私たちが直面している現実です。
時代が変われば、お金の守り方も変える必要があります。今の私たちは、「現金で守る」時代から、「仕組みで守る」時代に生きていることを、まずは受け入れることが大切なんです。
現金100%ポートフォリオのリスク──子育て世帯こそ知っておくべき理由
家計を現金だけで管理していると、一見「安定している」「管理しやすい」と感じるかもしれません。特に子育て世帯にとっては、突発的な出費や将来の教育費に備えて、いつでも引き出せる預金は心強い存在です。
しかし、家計全体が「現金100%」という状態には、目に見えない大きなリスクが潜んでいます。それは、将来的に必要となる支出に対して、今の現金の価値が十分ではなくなってしまう可能性です。
備えている「つもり」では足りない──将来に強い家計へ
たとえば、子どもが小学生の今、将来の大学進学に向けて毎月積み立てをしていたとします。仮にそのお金を10年間、普通預金で寝かせていた場合、金利はほとんどつかず、インフレによって実質的な価値は目減りしていくことになります。一方で、大学の学費や生活費は年々上昇しています。文部科学省のデータでは、私立大学の年間授業料は10年前よりも平均で数万円高くなっています。
これは住宅購入資金や老後資金でも同様で、すべてを現金で管理するスタイルは、物価上昇に追いつけないという本質的な問題を抱えています。
だからこそ、今のうちに“守り方”を見直す必要があります。家計の一部だけでも、インフレに備える仕組みを組み入れること。それが、未来の安心につながる第一歩です。
投資が怖い人へ──最初の一歩は“理解”からはじまる
- 「投資は怖い」
- 「損したらどうしよう」
- 「なんとなく信用できない」
——こうした声は決して珍しいものではありません。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2023年)」によれば、投資をしていない人の理由として「元本割れのリスク」(52.9%)や「知識や経験がない」(39.5%)などが上位に挙げられています。
しかし、本当に怖いのは“知らないこと”そのものかもしれません。実は、多くの人が「投資=ギャンブル」「一度始めたら止められない」といったイメージにとらわれ、正しい情報を知る前に拒否反応を起こしてしまっているのです。
投資とギャンブルの違いは、「期待値がプラスかマイナスか」という点にあります。ギャンブルは長期的に見ると損をする仕組みですが、長期的な資産運用は、適切に分散されたポートフォリオで行えば、インフレに対抗しながら資産を守り、育てる手段になり得ます。
最初から完璧な知識を持つ必要はありません。まずは「なぜ投資が必要なのか」「現金だけではどんなリスクがあるのか」といった背景を理解すること。それが、投資への最初の一歩です。
まとめ|お金の価値を守る視点
- インフレは、預金の“実質的な価値”を静かに減らします
- 「元本保証=安全」とは限らず、インフレ下ではリスクにもなりえます
- データから見える、金利とインフレ率のギャップが問題の本質です
- 親世代の成功体験が、今の時代には通用しない可能性もあります
- 子育て世帯こそ、長期視点での資産運用を学ぶ必要があります
- 投資を理解することが、リスクに強い家計づくりの第一歩です
「貯金していれば安心」
その考えが、今の経済環境では必ずしも通用しない状況になっています。インフレが続く限り、現金だけで資産を守ることは難しくなっていきます。
まずは事実を知ること。そして、家計の一部からでも見直してみること。
それが、これからの暮らしに備える確かな一歩になるはずです。
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