初期設定の支出カテゴリ:17分類では、かえって“見直しづらい家計簿”になってしまうことがあります。
本記事では、私が実践している「5カテゴリ運用」の具体例を紹介しながら、家計簿を“振り返りやすく、続けやすい”形に変えるための考え方と工夫をお伝えします。
なぜ「デフォルトの17分類」は続かないのか?
マネーフォワードの調査によると、家計簿が続かない理由として最も多かったのは「面倒だから」。さらに、「細かくつけようとして完璧にできず挫折した」という声も多数あがっていたそうです(※調査結果はこちら)。
大カテゴリが17項目あることで、円グラフなどの可視化画面では色分けが細かくなりすぎてしまい、支出の少ないカテゴリは潰れて見えなくなってしまいます。「何に使ったのか」を見返したいだけなのに、視覚的に情報が入りづらくなってしまうんですね。
まさに私自身も同じ壁にぶつかってきました。そこでたどり着いたのが、カテゴリを大胆にシンプル化し、“振り返りやすい形”に整えるという方法です。
その結果、「どこを見ればいいのか分からない」「見直すのが面倒」と感じやすくなり、家計簿を見ること自体が遠ざかってしまう…という悪循環に陥りがちです。
“選択肢過多”が家計簿に与える悪影響
家計簿の目的は“変動費のモニタリングと改善”であることを再確認しておきましょう。家計簿はただ支出を記録するだけではなく、不要な支出を見直して、お金の使い方を最適化するためのツールだと考えています。
実はこの「カテゴリが多すぎると続かない」現象には、心理学的な背景もあります。
人は「選択肢が多すぎると、意思決定を避けやすくなる」とされています(いわゆる“選択肢過多”の理論)。これは家計簿でも同じで、カテゴリが多すぎると「どこを見ればいいのか分からない」という状態になり、結局振り返る気力を失いやすいのです。
「ミニマル設計」が家計簿の継続率を高める
情報が多すぎると人は混乱し、途中でやめてしまう。
これは“認知的負荷”という心理的なメカニズムに基づいています。
家計簿も同じで、「見るカテゴリが少ない」「毎月チェックする項目が明確」といった“迷わない設計”にしておくだけで、振り返りのハードルが驚くほど下がるんです。
私はこの考え方に基づいて、マネーフォワードMEのカテゴリを最小限に整理しました。おかげで、家計簿の見直しが苦じゃなくなったどころか、「生活のリズムを整えるツール」になっています。
だからこそ、あらかじめ“見るべき項目”を整理しておく。カテゴリの数を絞るだけでも、家計簿はぐっと続けやすくなるのです。
私の家計簿は「5つの視点」で管理しています
私自身は、マネーフォワードMEを「5つの大カテゴリ」に分類して管理しています。
厳密には、1つの大カテゴリ【住宅】に“固定費の全て”をまとめ、残りは【食費】【健康・医療費】【趣味・娯楽費】【特別な支出】4つ大カテゴリを軸に変動費を記録しています。
大カテゴリ | 内訳項目 |
---|---|
住宅 | 家賃(住宅ローン)、水道光熱費、通信費、交通費、車両維持費、保険、サブスクリプション |
食費 | 生活必需品費(食費+日用品費)、コンビニ、外食 |
健康・医療費 | 医療費、美容・被服費、子育て費用 |
趣味・娯楽費 | 趣味、旅行費、家族交際費 |
特別な支出 | 現金引きだし、家具・家電、冠婚葬祭、その他特別支出 |
目的は、何をモニタリングすべきかを明確にすること。
私の場合、家計簿は「家計を最適化する為のツール」であり、情報を“見る前に選別する”仕組み化・設計が必要だったのです。
「住宅」カテゴリに固定費を一括集約する理由
まず最初に取り組んだのが、「固定費の集約」です。
具体的には、以下のような費目をすべて「住宅」カテゴリに入れています。
- 家賃・住宅ローン
- 電気・ガス・水道
- 通信費(スマホ・光回線)
- 車両維持費(ガソリン・車検費用・自動車保険)
- 交通費(公共交通機関・タクシー代)
- 保険(生命保険・自転車保険・火災保険など)
- サブスク系(Netflix・Amazonプライムなど)
これらは毎月ほぼ同じ額が発生するため、モニタリング対象としての優先度は低い。
むしろ、“月の支出全体の中で固定費がいくら発生しているのか”を一目で見れることが重要です。
家計のクセは変動費に出る|4分類で気づく使い方の傾向
固定費は「住宅」カテゴリに集約し、日々の変動を生む支出は次の4つに分類して管理しています。それぞれの分類には、行動のクセや支出傾向を可視化する狙いがあります。
食費カテゴリ
食費カテゴリでは「生活必需品」「コンビニ」「外食」の3つに分けて記録しています。
マネーフォワードMEの仕様上、反映されるのは商品ごとの明細ではなく、1回の会計ごとの合計金額です。私自身、スーパーやドラッグストアでの買い物が多く、食料品と日用品がひとつのレシートに混在するケースがほとんど。これを毎回分けて管理しようとすると、かえって手間が増え、家計簿が続かなくなってしまいます。
そこで私は、いずれも“生活に不可欠な支出”であるという考えから、「生活必需品費」として一括管理する方針にしています。
一方で、コンビニ利用や外食のような“嗜好性の高い支出”は行動の傾向が出やすいため、あえて別カテゴリとして記録。コンビニは「つい寄ってしまう」「割高な買い物になりやすい」という行動特性が見える化されますし、外食費も家族の楽しみではあるものの、出費としては膨らみやすい傾向にありモニタリングが必要と判断しました。
このように、「生活に欠かせない支出」と「ゆとり費・浪費」を分けて把握することで、無理のない家計改善を目指しています。
健康・医療費
このカテゴリでは、「医療費」「美容・被服費」「子育て費用」の3つをまとめて管理しています。
医療費は、通院にかかった自己負担分を記録しています。身体は資本なので節約する対象ではありませんが、1年を通してどれくらい医療費が発生したのかを把握しておくことは、今後の備えにもつながります。
美容・被服費には、美容室のカット代やヘアケア用品、スキンケアなどの費用を含めています。これらも医療費と同様、我慢したくない支出ですが、満足度の高いものに絞って納得して購入しているか、無駄遣いになっていないかを振り返るために記録しています。服に関しても、必要最低限を意識しながら、支出の増減を月単位・年単位でチェックしています。
子育て費用は、年間を通して子どもにどれだけの支出が生じているのかを把握する目的で設けています。医療や育児グッズ、日用品などの費用の見える化に役立っています。
趣味・娯楽費
このカテゴリでは、「趣味」「旅行費」「家族交際費」の3つをまとめています。いずれも生活に必須ではない“ゆとり費”として位置づけ、家計の中でのバランスを確認するために記録しています。
趣味には、娯楽や趣味関連の支出を全般的に含めています。気分転換や楽しみのための支出ですが、過度になりすぎないよう全体額を可視化することを意識しています。
旅行費は、我が家では年に1〜2回ほど行う家族旅行の費用を記録しています。宿泊費、交通費、現地での外食費などもまとめてこのカテゴリに計上し、1回あたりや年間の旅行コストを把握しています。
家族交際費では、家族・親族・友人へのプレゼント代など、対人関係にかかる費用をまとめています。金額そのものよりも、「どれくらい外部に対して支出しているか?」という視点で見返せるようにしています。
特別な支出
このカテゴリでは、「現金引きだし」「家具・家電」「冠婚葬祭」「その他特別支出」を分類しています。いずれも発生頻度は高くないものの、金額が大きくなりやすく、通常の月次予算とは分けて管理したい費用です。
現金引きだしは、やむを得ず現金を使う場面での出金を記録しています。家計簿上では使途が見えづらくなりがちなため、引き出し単位で記録して残高のずれを防ぐ意図があります。
家具・家電は、購入頻度こそ低いものの、1件あたりの金額が大きくなりやすい支出です。生活に必要なものとはいえ、突発的に大きな出費となるケースが多いため、特別枠として切り出して記録しています。
冠婚葬祭では、結婚式のご祝儀や葬儀の香典など、突発的かつ対人要素の強い支出を整理しています。急な出費として積立の対象にもなりやすいため、別管理する意味があります。
その他特別支出は、上記のいずれにも該当しない単発的な出費を一時的に分類するための項目です。定期的な家計管理とは切り離して把握し、必要に応じてあとで再分類・分析を行っています。
この方法で、振り返り・改善・定着が一気にラクになる
このカテゴリ構成に変えてから、私の家計簿習慣は劇的に改善しました。
- 毎月の家計チェックが10分以内で完了
- 支出の傾向がすぐに把握できるようになった
- 無意識の支出パターン(つい甘えてしまう外食など)に気づきやすくなった
結局、家計簿を続ける最大の秘訣は「振り返りのしやすい仕組み作り」にあると考えています。
まとめ
- マネーフォワードMEの初期設定は細かすぎて、振り返りがしづらい
- 家計簿の目的は“家計の記録”ではなく“改善”のためのモニタリング
- 心理学的にも、選択肢が多すぎると行動が止まりやすい(選択肢過多)
- 筆者は5カテゴリに再構成し、「生活のゆるみ」や「支出の傾向」を可視化
- 結果、家計簿の振り返りが定着し、支出改善の実感が高まった
家計簿は続けることが何より大切です。だからこそ、自分にとって無理なく振り返れる形を整えることが、改善の第一歩になるのだと思います。
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