育休の手取りと生活費の不安。「いつ・いくら」入るのか?
2026年3月、我が家に双子が生まれます。すでに長男がいるため、一気に3児の父。いわゆる「人生ハードモード」への突入です。
迷わず「半年間の育児休業」を申請しました。
経済合理性云々ではなく、今の我が家の戦力(妻と私)だけで新生児2人+3歳児を回すには、私の離脱は許されないと判断したからです。
- 「育休中は給料の67%が出る」
- 「社会保険料が免除されるから手取りは変わらない」
ネット上にはそんな耳触りの良い言葉が並んでいますが、それを見たところで私の不安は1ミリも解消されませんでした。私が知りたいのは、教科書的な「%」ではありません。
- 「で、口座には実際いくら入るの?」
- 「給料が止まってから、最初の入金はいつになるの?」
- 「本当に生活できる金額が振り込まれるの?」
この「見えない恐怖」を数字で可視化して解消するために、自分の直近の給与明細とカレンダーを引っ張り出し、泥臭くシミュレーション(実験)してみることにしました。
これは、年収560万の会社員が挑んだ、育休キャッシュフローの検証記録です。
シミュレーションの前提条件:年収560万・月収40万モデルの給与詳細
まずは、今回のシミュレーションの前提条件(私のスペック)を整理します。
- 属性: 30代男性、北国在住、会社員。
- 年収: 額面約560万円。
- 月々の総支給は平均38万円前後(残業・変動手当含む)。
- 賞与は夏冬あわせて年80万円程度。
- 状況: 2026年3月30日に双子出産予定、翌31日から育休開始。
検証:直近6ヶ月の残業・手当が育休給付金に与える影響
私が注目したのは「育休給付金の計算ロジック」です。 育休給付金の金額は、育休に入る「前月」から遡った6ヶ月間の給与総額(額面)で決まります。ここには、毎月変動する残業代や各種手当も含まれます。
つまり、「直近6ヶ月の給与実績(残業や手当を含む総支給額)を正確に計算すれば、来月から振り込まれるリアルな入金額が見えてくるはずだ」 ということです。これを検証します。
育休給付金の計算:給与明細から算出した月額支給額と手取り維持率
早速、手元にある給与明細(昨年9月〜今年2月分)をExcelに打ち込み、計算してみました。
ポイントは、実際に口座に振り込まれる手取り額ではなく「総支給額(額面)」を使うことです。
【直近6ヶ月】給与総支給額の実績データ
📊 1. 直近6ヶ月の給与実績(算出根拠)
| 対象月 | 総支給額 (額面) |
|---|---|
| 9月 | 381,337 |
| 10月 | 383,337 |
| 11月 | 365,837 |
| 12月 | 386,100 |
| 1月 | 378,574 |
| 2月 | 323,310 |
| 6ヶ月合計 | 2,218,495 |
| 賃金日額 (÷180) | 12,324円 |
✅ 2. 期間別・給付金シミュレーション
-
① 最初の28日間 (80%) 出生時育児休業 / 新制度想定276,052円 単価: 9,859円/日
-
② 育休前半 (67%) 開始〜半年間 (30日換算)247,710円 月額目安 / 単価: 8,257円/日
-
③ 育休後半 (50%) 半年経過後 (30日換算)184,860円 月額目安 / 単価: 6,162円/日
社会保険料免除:約5.4万円/月
(手取り換算効果)
住民税:約1.7万円/月
(免除されず別途請求)
計算結果:月額24.7万円。手取り維持率は驚異の88%
計算の結果、私の「育休給付金(月額目安)」は 約24万7,000円 となりました。
育休中は「社会保険料」が免除、給付金は「非課税」になります。実際に入金されるであろう給付金額を参照すると、特に最初の半年間は、平常時の給料の約9割の収入が確保されることが分かります。
| 期間 | 制度上の給付率(対 額面) | 実質手取り維持率(対 手取り) | 私の場合の金額(手残り目安) |
|---|---|---|---|
| ① 最初の28日間(出生時育休) | 67% + 13%= 80% | 約 100% | 約 27.6万円 |
| ② 育休前半(〜半年) | 67% | 約 88% | 約 24.7万円 |
| ③ 育休後半(半年〜) | 50% | 約 63% | 約 18.5万円 |
※手取り維持率は、通常時の手取り(約28万円)と比較した概算値
入金日はいつ?初回振込までのスケジュールと「魔の空白期間」対策
これまでの検証で金額の不安は解消されました。今度は給付金が実際に振り込まれる「入金のタイミング」に焦点を当てて検証します。
育休給付金は育休を取得した事実、つまり働かなかった実績に対して給付されます。また原則として「2ヶ月に1回」しか申請出来ず、その審査や振込には時間がかかります。
カレンダーに収入と支出を書き込んでいくと、対策必須の「魔の空白期間」が浮かび上がりました。
【資金繰り表】育休中の入金スケジュールとキャッシュフロー推移
📅 育休資金繰り完全マップ(夫編)
21.0万
5.0万
72.5万
49.5万
20.0万
28.0万
51.0万
28.0万
28.0万
▲4.0万
▲3.6万
▲1.7万
▲1.7万
▲5.7万
▲1.7万
×12ヶ月
(底)
育休申請
保険加入
納付
準備
※【結論】5月に累積赤字が最大(約57万)となるため、最低60万円の現金バッファが必要。
※読者の方は「基礎生活費」をご自身の家計に合わせて読み替えてください。
シミュレーションで判明した「資金ショート」と「住民税」のリスク
1. 育休開始から「2〜3ヶ月後」の資金ショート危機
私の場合、4月25日に最後の給料が入った後、次の入金(給付金)があるのは早くて6月下旬。丸々2ヶ月間、収入が途絶えます。つまり育休開始から2〜3ヶ月目が最も危険な時期になります。
この時期は「最後の給料」の支給と「最初の給付金」の入金の狭間にあたる、まさに家計のエアポケットのような期間だからです。
2. 無収入期間に届く「請求書」
収入がない5月・6月に限って、大型の出費が重なります。
- 5月: 自動車税
- 6月: 住民税の納付書
【補足:通年で警戒すべき「隠れコスト」リスト】
- 車検・冬タイヤ(10月〜11月): 特に北国ではタイヤ購入が重なると10万円以上飛びます。
- 暖房費の激増(1月〜3月): 育休中は一日中家にいるため、光熱費が例年の1.5倍〜2倍になる覚悟が必要です。
- 賃貸更新料・保険の年払い: 忘れた頃に引き落とされます。年払いの月を確認しておきましょう。
育休の対価シミュレーション:半年休むと生涯賃金はいくら減るのか?
生涯賃金は「育休を取らずに働き続けた場合」と比べて、どれくらい減るのか?
これまでの検証では半年間の育休においては、普段の手取り給料の約80%が保証されることが分かりました。では実際に半年間働き続けた場合と育児休暇を取得した場合では両者にどのような差が出るのかを以下の表で深掘りします。
【コスト比較】働き続けた場合 vs 育休を取った場合の差額
⚖️ 育休の「対価」シミュレーション
6ヶ月間(4月〜9月)、働いた場合 vs 休んだ場合
(通常勤務・満額支給想定)
※期間按分等で減額想定
失うのは「給料2.2ヶ月分」だけ。
それを対価に「6ヶ月の時間」を買う。
時間単価は驚異の「145円」です。
結論:半年間の育休で失う収入(コスト)は約63万円、育休の時間単価は145円。
半年間仕事を休み、給与・賞与も減額される。それでもトータルの損失は約63万円であり、私の場合は平時の給料の約2ヶ月分に相当します。これを「得られた自由時間(約4,320時間)」で割ると、時間単価はたったの145円です。
さらに実務担当(オペレーション)視点で考えれば、私が家にいることで、市場価値にして約360万円分(ベビーシッター換算)の労働力を家族と共有できます。
63万円の投資で、360万円分の価値を生み出す。投資対効果(ROI)で見れば、これほど割の良い投資案件はありません。
まとめ:育休は浪費ではない。3つの検証結果
今回のシミュレーションを通じて、漠然としていた不安の正体が明確になりました。 年収560万の会社員が半年間の育休を取得する場合、事実は以下の3点に集約されます。
- 金額の事実: 額面の67%支給でも、手取りの80%程度は維持できる。
- 時期の事実: 育休開始から2〜3ヶ月後が最も資金難になりやすい。ここを乗り切るための現金準備さえあれば、家計は破綻しない。
- 対価の事実: 私の場合、育休取得による損失は約60万円。しかし、逆に言えば「60万円支払えば、半年間も家族との時間を確保できる」ということ。時間単価145円の投資対効果(ROI)は極めて高い。
育休は「キャリアの空白」でも「家計の危機」でもありません。 数字で見れば、家族というチームのOSをアップデートするための、「極めて合理的で割安な投資期間」です。
もちろん、これはあくまで私の給与明細に基づく一例です。 しかし、仕組みは誰でも同じです。これから育休を取る予定のパパさん。まずはご自身の給与明細を取り出して、このシミュレーションをやってみてください。 「見えない不安」が「管理可能なタスク」に変わるはずです。
【付録】あなたの場合はいくら?簡易シミュレーター
※計算ロジック:
・育休給付金 = 非課税・社会保険料免除
・住民税引後 = 給付金 - (額面の約5%相当)
・給付金上限額(約31.5万円)考慮済み

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