「クレジットカードを減らしたい」「家計をもっとシンプルに整えたい」──そんな方に向けて、この記事では、銀行口座やクレジットカードの“持ちすぎ”を見直すことで、支出の見える化と管理のしやすさを両立させる方法をご紹介します。
便利さを求めて増やした口座やカードが、実は家計管理の“ノイズ”になっているかもしれません。筆者の体験も交えながら、その本質と実践的な解決法を掘り下げていきます。
銀行口座やクレカが多すぎると何が起こるのか?
家計管理がうまくいかない背景には、使っていない銀行口座や、目的があいまいなクレジットカードが存在しているケースが多くあります。給与振込用、貯蓄用、投資用といった用途別の引き落とし口座が複数あったり、利用店舗やポイント還元の条件に合わせてクレジットカードを使い分けていると、家計全体の支出の流れが見えづらくなってしまいます。
一般社団法人日本クレジット協会が公表した「クレジットカード発行枚数調査(2023年3月末時点)」によると、全国での契約枚数は約3億860万枚。これを成人人口で単純に割ると、1人あたり平均3.0枚のカードを保有している計算になります。
また、JCBが実施した「クレジットカードに関する総合調査(2022年)」では、カード保有者の平均枚数は同じく3.0枚という結果が出ています。保有枚数は1〜2枚がそれぞれ20%台、3枚という人が19.7%。さらに「7枚以上」と回答した人も5%ほどおり、複数枚保有が一般的な傾向であることが見て取れます。
用途が明確でないままカードを増やすと、請求金額の把握が難しくなり、結果として「使途不明金」が発生しやすくなります。また、引き落とし口座が複数あると、口座ごとの残高管理が複雑になってしまいます。家計簿アプリとの連携がうまくいかなくなったり、確認すべき項目が増えすぎて途中で管理をあきらめてしまう、といったリスクも出てきます。
“減らすこと”がもたらす3つの効果
口座やクレジットカードを整理するだけで、家計管理がグッとラクになる実感があります。具体的には、次のような効果があります。
- 支出の見える化
メインの銀行口座と1〜2枚のカードに絞り込むことで、日々の支出が自然と目に入るようになり、確認項目も最小限に。アプリとの連携もよりスムーズになり、支出の全体像が格段につかみやすくなります。 - 無駄な出費の発見
整理の過程で「なんとなく払い続けていたサブスク」や「使っていない年会費カード」など、今まで見過ごしていた支出が浮かび上がってきます。 - 心理的なストレスの軽減
管理対象が減ることで、どのカードで払ったのかなどの小さなストレスが減り、家計管理に前向きになれる環境が整います。
口座やカードを複数持つことのデメリット
支出の全体像が把握しづらくなる
給与はA銀行、貯蓄はB銀行、光熱費はC銀行に設定しつつ、買い物用にはXカード、旅行にはYカード…と使い分けていると、支出情報があちこちに散らばってしまいます。家計簿アプリを使っていたとしても、連携がうまくいかないこともあり、「見える化」の効果が半減してしまうことも。
特に、「この支払い、どのカードだったっけ?」と確認に時間がかかる状況は、家計管理のやる気をそいでしまいがちです。支出を見える化するには、ツールの使い方だけでなく、情報の整理も大切です。
確認・管理の手間が増える
口座やカードが多いと、それだけ管理のタスクも増えてしまいます。利用明細のチェック、引き落とし日や残高の確認、ポイントの有効期限など…どれも大事だけれど、意外と時間とエネルギーを使います。
家計簿アプリを連携していても、認証エラーが出たり、一部手動で入力しなければならなかったりと、少しずつ「面倒だな」と感じる場面が増えていきます。最初は頑張れても、日々の忙しさの中でつい後回しになり、やがて放置されてしまうことも。
また、カードの還元率やキャンペーンを意識して支払い方法を選んでいると、その“選ぶこと”自体に疲れてしまうこともあります。毎回の決断が、小さなストレスになっていくんですね。
使途不明金や引き落とし忘れのリスク
複数のカードや口座を使い分けていると、つい見逃してしまうのが「何に使ったかわからない支出」や「残高不足による引き落とし忘れ」です。
たとえば、「この請求、なんだっけ?」と明細を見て思い出せなかったり、複数の口座にお金を分けていたせいで、必要な日に残高が足りずに引き落としができなかったり…。そんな小さな“うっかり”が、気づかぬうちに積み重なってしまいます。
心理的ストレスの増加
確認する項目が多くなると、それだけで気持ちの負担になります。「今月の支出、全部チェックできてないな…」「このカードの残高、確認してないかも」といった不安が、じわじわと積もっていきます。こうした小さな心理的負担が、家計管理の継続を難しくしてしまう原因にもなります。
口座やカードを整理することで、確認すべき情報が減り、「ちゃんと把握できてる」という安心感が得られます。これが、日々のストレスを減らす大きな要素になります。
年会費や維持費のムダ
使っていないクレジットカードをそのまま持ち続けていませんか? 実は、年会費がかかるカードを使わずに放置しているケースは少なくありません。
たとえば年会費が3,000円のカードを3年間放置すれば、それだけで9,000円のムダ。しかも自動引き落としされていると、本人が気づかないまま払い続けてしまうこともあります。
また最近では、長期間利用履歴のない銀行口座に維持手数料を課す動きも出てきています。「使っていない=お金がかからない」とは限らない時代だからこそ、不要な口座やクレジットカードは解約を推奨します。
放置による不正利用のリスク
長期間使っていないクレジットカードを放置していると、思わぬトラブルにつながることがあります。
使っていないカードが第三者に悪用され、気づかないまま引き落とされていた…というケースも実際に起きています。利用通知が埋もれていたり、明細を確認していなければ、発見が遅れて損害が拡大することもあるんです。
「使っていないから問題ない」と思いがちな口座やカードほど、しっかり管理・整理しておくことが安心につながります。
「永年無料」は“今のところ無料”という意味で、将来的に有料化される可能性があります。
「永久無料」は“今後もずっと無料”を意味します。
クレジットカードでは「年会費:永年無料」と表記されるものが多いですが、放置していると規約変更に気づかず、いつの間にか年会費が発生していた…というケースもあるので注意が必要です。
私が実際に“減らして”変わったこと
私自身、かつては夫婦で4つの銀行口座と8枚のクレジットカードを持っていました。ですが、毎月の家計チェックのたびに、それぞれのWeb明細を確認する作業が面倒で、次第に管理疲れを感じるように。
そこでマネーフォワードMEを導入したタイミングで以下のようにスリム化しました。
- メインバンクは住信SBIネット銀行に一本化
- クレジットカードは決済用とサブの2枚体制に
- 給与受け取り、引き落としも全て1つの口座に集約
この結果、支出の全体像がクリアになり、マネーフォワードMEとの連携もスムーズに。月末の家計チェックも、以前の30分から10分ほどに短縮できました。パートナーとも共通の家計状況を把握できるようになり、話し合いも円滑になりました。
“減らす”ためのステップと注意点
いきなり整理しようとすると手間に感じるかもしれませんが、以下のステップを踏めばスムーズです。
- 現状の利用状況を把握する
各口座・カードの引き落とし履歴や利用頻度を家計簿アプリや通帳で洗い出してみましょう。 - 用途が重複しているものを仕分ける
似たような役割のカードや口座があれば、どちらかに統合することを検討しましょう。 - 解約・移行のスケジュールを立てる
引き落とし先の変更やポイントの使い切りなどを計画的に行うことで、スムーズに整理が進みます。
ただし、住宅ローンやポイント優遇のあるクレジットカードは解約することで不利益になる場合もあります。「とにかく減らす」ではなく、「本当に必要なものを残す」という視点が大切です。
「減らす=最適化」という考え方を持とう
数を減らすという行為は、単なる手間の削減ではありません。「選び抜く」「見える化する」ための前向きなプロセスです。
家計管理は単なる数字のコントロールではなく、自分と家族の暮らしを見つめ直す機会でもあります。余分な決済手段を整理することは、生活の無駄やストレスを減らし、「お金の流れがわかる」安心感を生み出します。
まずは、使っていない銀行口座やクレジットカードのリストアップから始めてみましょう。その一歩が、家計の見える化と支出の最適化のスタートになります。
まとめ|増やすより、減らすほうが家計は整う
- 銀行口座やクレジットカードを減らすと、支出の全体像が見えやすくなる
- 管理対象が減ることで、心理的な負担やストレスも軽くなる
- 支出の見える化が、無駄遣いの発見につながる
- 整理は「減らす」というより「最適化」するプロセス
- 使っていない口座やカードをリストアップすることから始めよう
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